ビデオ振り返り 02-03シーズンNHK杯男子フリー ジェフと大ちゃん

京都のアクアアリーナでの開催でした。
女子では恩田美栄ちゃんが優勝と、ドイツに続きGP2連勝とすっごい勢いがあったころですね。
男子の本命はもちろん本田武史ですね。スケートカナダに続いて優勝し2連覇を達成したいところでしたね。面子的には充分に可能性のある大会だったのですが、残念ながらイリア・クリムキン*1の復活によってまさかの2位になった大会でしたね。この時のクリムキンは素晴らしかった、独得のクリムキンワールド全開で、ロシアはヤグプルアプだけじゃないのですよ!と、ソルトレイク五輪からフィギュアスケートファンになった方々に衝撃だったのではないでしょうか。私ももちろん衝撃を受けました。
このときは大ちゃんも出場していましたね。
このシーズンの大ちゃんのフリーは「スターウォーズエピソード2」これはリーアンミラーの振り付けなのかな?まだタラソワさんのお世話にはなっていない頃なのかな?
ちょっぴりロマンチックな雰囲気の衣装がよく似あってますね。まだまだ身体が子供で、顔も子供だ。なのにしっかりと4回転にチャレンジしているんだよね・・・もちろん失敗、そしてトリプルアクセルも、、あぁ痛そうな転倒だ(泣)でも、すばらしく滑らかで味のあるスケートだね、こんな滑りのできる選手って今のジュニアにいるかしら?まだまだジュニアの年齢なのに、表現力がすっごくシニアなのよ。きちんと音楽を表現している。現在のライバルである一つしか違わない織田くんの今シーズン前半の演技よりもこの当時の大ちゃんの演技の方が大人な気がします。中番の二つ目のトリプルアクセル、これはなんとか降りましたね、素晴らしいです。これで勢いがついたのでしょかね、後半のジャンプはすべてばっちり降りましたし、今と同じように、後半になればなるほどノッってきて迫力のある滑りになってますね。演技終了後はやや不本意そうな顔をしていますが、この時期、これだけ出来れば充分だったのではないかなぁ。すごい子だよ。
で、もちろん、このとき、ジェフリー・バトルも出場しておりますよ。
ジェフはSPを4位で終えているのでグループ2。一番滑走ですね。実はこのシーズンのスケートカナダを私は現地まで見に行っていたのですが、そりゃもうさんざんな出来だったんですよね(泣)なので、この時のプログラム「Cello Concierto in E minor」の印象って悲惨な演技の記憶しか出てこないのですが、しかし、今になって見てみると、このNHK杯の演技はなかなか良かった方だと思います。
ジャンプミスはボロボロとありしたが、派手な転倒もなく、まずまずまとめた演技だったと思います。演技終了後本人も納得したようなそんな感じの表情に見えます。キスクラではバーケル氏もOK!って感じでなごやかな雰囲気ですね。
それにしても、このシーズンはずいぶんと難しいものをもってきましたよね。音楽がとても難しい、そして構成がとても大人な感じです。当時の男子のプログラムは、ヤグプルの闘いの後の影響もあってか、派手な曲で派手な上半身の動きがもりこまれ、そのかわりに滑りそのものがおろそかになっているプログラムや、漕いでジャンプ漕いでスピンな演技も多かった時代でもあったのですが、このジェフのプログラムまさに滑りも存分に見せるような感じで、当時としてはとても意欲的なものだったと思います。イーグルやステップで技を繋ぎ「フィギュアスケート」な演技でした。そうそう、弧を描くイナバウアーも入ってます。ただ、当時のジェフが表現するには難しすぎるプログラムだったように思えます。今のジェフのように滑りで世界がすーっと幽玄に広がっていくような、そういうムーブインザフィールドがまだ出来ていません。美しいことは美しいのですが、滑りだけで観客を圧倒するには力不足な感じでした。身体の使い方も今よりも堅い。あと、ジャンプにかなり気をとられているような感じですよね。ジャンプがかなり目立つところに入っているというのもあるのですが、もうジャンプに入る前から一生懸命構えてタイミングを計っている感じで・・・その所為で余計に失敗してそうな感じで。・・・現在の、音とドンピシャな感じでほとんど助走をとらずスイっと跳べるようになったのって凄いことだよね・・・。素人ながらいつも、もうちょっと助走をとって落ちついて、入り方を簡単にして跳べばいいのに、その方がもっと降りれるだろうに・・・とも思うのですが、でも、それが彼のスケート道としてのこだわりというか、彼の目指すフィギュアスケートなのかな。それにしても・・・なんとなくですが、彼は音楽と合わないと身体が動かなくなるタイプの人だったりするとか。
結局、このプログラムは世界選手権でもボロボロの演技になってしまったわけで最後まで上手く自身のものにすることが出来なかったように思えます。でも、このプログラムに挑んだことが今のジェフに繋がっていますよね。この曲に挑んだからこそ、翌シーズンの「サムソンとデリラ」やさらに昨シーズンのSPのラフマニノフや「ナコイカッツィ」、そして残念ながら競技では断念することになりましたが、あの「Tribute to Glenn Gould」を表現できるジェフがいるのだと思います。
この「Cello Concierto in E minor」はシーズンを通してジェフの成績が悪かったことや、何度もくり返し見たくなるような良い演技がひとつも無かったということもあって、あまり語られることが無いのですが、ジェフの方向性のベースにもなった大事なプログラムなのではないかなぁ思います。今のジェフの滑りでこのプログラムを見てみたいものです。

この時の結果はこちらからどうぞ↓
http://www.icecalc.org/events/nhk02/results/index.htm

*1:あ、クリムキンのキーワードがすでに出来ていた・驚いた