この時期に何故か唐突にロレンスとサムソン…で「名演技募集中」

色々と忙しい日々が続いているので、頭の飽和状態が続いています。あと、まだ旦那の夏休みが続いているので…落ちついて日記を書く気になれない(笑)
ということで、随分と前に書きかけてそのまま放置していたものがあるので、それを貼っておきます。
…そもそも世界選が終ってしばらくたったあたりの時期の「下書き保存してあった文」で、言いたいことを上手くまとめられなかったからこそ放置していた記事で…ざーっと修正していますが…やっぱり上手くまとめられなかった…(汗)



今シーズンも沢山の名演技が生れましたね。しかし「フィギュアスケートの表現力」についても色々と考えさせられました。
ジャッジのつけた点数には色々と考えさせられてしまうものがあります。旧採点時代も今も。ノーミスで滑りきりそこそこのレベルのステップとスピンがあればセカンドマークもPCSも跳ね上る。もちろん、芸術性というのは高い技術に裏打ちされたものだしね、それはそれで良しと思う部分もあります。奇抜なことを目指してそれを「アート」といっても、しっかりした技術が無いと単なるキワモノだしね。また、いくら感性豊かに音楽を感じていたとしてもも、それをしっかりと体現する身体と技術が無いと空回りだしなぁと。
フィギュアスケートの芸術性について考えだすと、何をもって芸術とするかと、そして芸術とは何か、「Art」という西洋の言葉を「芸術」と翻訳したことは正しかったのか?とか、、そのまま人生の永遠のテーマに話しが広がってしまいそうなので…私なんぞではとてもとても言葉に表すことが不可能な領域なので…おいておきます。

私にとって名演技と思うものの一つに、やはりその選手の物語りとシンクロするような、そういった部分を感じられるプログラムと、「その時」の演技かなぁと。

ヤグディンの98-99年シーズンの「アラビアのロレンス」。これ、本当に背景に広大な砂漠が見えるのですよ。ゆらゆらと熱に揺らめく砂漠が見えるの。19〜20才のロシア人が観客に砂漠を見せるって、、これって、ちょっと凄いことだよ。
特に世界選手権の演技、とても素晴らしかったです…圧巻でした。なんというかね、あの時の演技って「バカラ侵攻に成功」の神がかったロレンスの姿とシンクロするようなところがあって好きなのよね。ヤグのクリーンでパーフェクトな演技は、第2滑走だったにもかかわらず、ポーランドのジャッジがテクニカルで6.0をつけた、、それくらいに素晴らしい演技だった。歓喜でガッツポーズをとるヤグと、神がかった勝利をおさめ喜ぶロレンスのイメージがすっごく重なるのよ。しかしながら、ロレンスの人生はそれで万々歳でめでたしめでたし…というわけではありませんね。…色々なことが起きるわけですよ。そう、あの時成功したからといって全てバラ色というワケにはならないのが人生。おごりと迷いと、やるせなさやらと、色々とあるわけです*1。この感じにその後のヤグが妙に重なったのです。ヤグの物語とロレンスの物語が不思議にシンクロした瞬間を見たような気がしたのです。

ジェフの「サムソンとデリラ」にもそういったシンクロ見たのよ。ジェフは決してサムソンのような怪力男のイメージでは無い人なのだけども…。ただ、あのオリンピックの演技、あれは今までひたすら努力努力*2を続けて来たジェフと、石うすを黙々と引き続けたサムソンの姿がダブります。言い訳をせず、練習あるのみと言いつづけ、あきらめずに走り続けるジェフの祈りが、神様に届き、力を与えてもらったような、そんな執念すら感じさえる凄みのある滑りでした。
ジェフはどちらかといえば、細い極みのようなものを表現するのが得意な選手で「大迫力で観客を圧倒する演技」をする選手とは言いがたい選手でもあります。現に、今になって思うことですが、旧バージョンのサムデリを滑っていた頃、プログラムの構成の問題もあるのでしょうが、最後の部分は、盛りがるメロディーに対してジェフのスケートが弱いなぁ…というようなところがあるような気がします。しかし、オリンピックの演技は力強く凄みがあるというか、とにかく気迫に満ちていて、まさにリンクの上に神殿が崩れゆくさまを見たような気がするのです。
……その後のエキシビションでのやや疲れ果てたような様子やら、世界選手権でのボロボロメタメタ状態を思うにつけ、そうだ、本当にあのオリンピックでサムソンは神殿を崩壊させて自らも死んでしまったんだなぁと…。ジェフはあの4分半に魂の全てを燃焼させたんだ…。後になってからも…不思議なシンクロ感。
まぁ、ヤグとジェフでは、選手としてのキャリアがあまりにも違うし、ロレンスのパーフェクト演技と「サムソンとデリラ」のミスがちらほらあった演技を同じように「名演技」のように括ってはヤグファンから石を投げられそうな気がしますが…。

と、他にもいっぱい「選手とプログラムがシンクロした演技」ってあると思うので、「これもそうなんだよ〜」ってのがあれば是非教えてもらいたいものです。やはり自分では気がつかないドラマっていっぱいあると思うのよ、ずーっと追ってきているファンだからこそ語れる演技があると思うのよ。
私がネット上でおつきあいをしている方々はそれぞれにご特別贔屓選手が違っていたりしています。だからこそ面白いのよね。私が知らないその選手の魅力をいっぱい教えていただいております〜。

*1:今度、機会があれば映画のロレンスについて色々と語りたいな

*2:ジェフはトリプルを降りるのに3年もかかったそうですね(http://www.absoluteskating.com/interviews/2006jeffbuttle-2.html)…。10代前半でクワドを降りれていたとか、あっというまにトリプルを降りたとか、そういう天才タイプの選手のお話と比べて対照的だなぁと思うのです。もちろん、天才肌タイプの選手でもまた違う部分で同じだけの「努力」をしているのだと思います。そうそう、ただし、ジェフはシニアに上がってからは素晴らしい「強運」の持ち主だったなぁと…、努力家だけども、杉田氏曰くのリンデマンのように「苦労人」のイメージは全く無かったりと…リンデマン…復活できるといいな…