煌めきの世界選デビュー

随分前といっても、4月頃に書きかけて、なんか上手くまとめられなくなってしまったので、いつものようにそのまま放置していたものですが、やっぱり自分の感じたことを上手く纏められなくとも、それでも、出来るだけマメに書き残しておいた方がいいかなぁと。今さらだけども残しておきますね。



今さらですが、やっとまともに世界選手権@カルガリーの男子シングルの録画物を見直しました。いや〜つくづく織田君、きらめいていましたね。前年のジュニアチャンピオンが、翌シーズン、シニアに上がって、即GPの表彰台と優勝、ファイナル進出、世界選で4位という快挙。…ここのところしばらくジュニアチャンピオン達は皆シニアでなかなか答えを出せずに苦労している中で…凄いな。
初めての世界選手権って、出られただけでも嬉しい〜!といったノビノビ感*1と、恐いもの知らずな部分が良い方向に作用するのか、なんともいえない煌めきを見せる選手が多いなぁ。
97年のヤグディンや98年のプルシェンコはちょっとだけ別枠にしておきますが…かれらは「煌めき」なんてもんじゃなくって「衝撃」だったから。特にプルさん。
今の有力選手で「初めての世界選での煌めき演技」として印象深かったのは、やっぱりジェフリー・バトルと、あと、ジョニー・ウィアー。それぞれの、その時のその年齢だからの、その状況だからこそ全てぴったりはまる「煌めき」演技だった。
ジェフとジョニーは世界選デビューの際の立場も、また、それまで道のりも全然違っているので、同列には語れないものがあるのだけどもね。


ジョニーの世界選デビューは03-04シーズンのドルトムント
00-01シーズンのジュニアチャンピオンという肩書きを思うと、いかに彼がシニアの壁にぶち当たってきたかわかるような。
SPは「Valse Triste」これ、タラソワ&プラトフ作の素晴らしいプログラムでしたね、この時のジョニーの「スケート」をするさま、音楽に没頭するさまの美しいこと美しいこと。無心の滑りで、何か特別の空気をまとっているように、そこだけ別の世界のような不思議な感覚の演技でした。
FP「Dr. Zhivago」はもうジョニーのフィギュアスケートの世界への憧憬がこめられているような演技でした。映画の最後の場面のダムの場面ではないけども、雪に閉ざされた世界が徐々に雪解けて、雪解け水はやがて大河になって全てを押流し、ってそこには確かな何かしっかりと生きていいるというか…。…私が言葉にするとなんて陳腐な…。悪夢のような03全米から…見事にカムバックしてきたジョニー、意地とかプライドとか根性とか…まさに、汗と涙のカムバックなのでしょうが、でも、このカムバックの一番の糧となったものは…このフィギュアスケートの世界への憧憬なのかなぁと…。ジョニーのロシア好きは有名ですが、その憧れの地、ロシアの動乱の時代の物語*2の世界を舞うジョニーは、力強く、そして無駄な力み一切無く、ノビノビと、とても美しかったです。素晴らしい、胸を打つ演技でした。
ちなみに、私の日記にたびたび登場するU嬢の「うぐいす日記」に、ジョニーのこのドルトムントの演技についての素敵な記事がございます。こちら04年12月の記事なので、今の時点ではまた違うことを感じられているかもしれませんが、とても素敵な記事*3ですよ。→その1 その2



ジェフについては以前にも書いたことがあったけども、01-02シーズン長野。
これは今のジェフの芸術性の原形があった素晴らしいSP「The Last Emperor」と、そしてそして、そしてジェフのもう一つのお茶目な魅力が詰まった「Gelsomina」御存じフェリーニ監督の映画「道」*4サウンドトラック。この演技もまたこのフィギュアスケートの世界への「憧れ」を感じさせる演技でした。この時、ジェフに対してリアルタイムで感じた「素晴らしい!…でも、19才のこの時点でクワド無し、トリプルアクセルがやっと…ということではこれから先とてもとてもトップで闘えるの選手にはなれないだろな…」*5という私の失礼なファンとしての思い上りに満ちた言葉と、この映画の中で、ジェルソミーナに対して綱渡り芸人が言った言葉「この世で役に立たないものは何ひとつない」という、この台詞が何故だか頭の中にグルグルとまわりました。
補欠で掴んだ憧れの舞台、大技はなくとも自分にできる技、今ほどは美しくはないけども印象的だったイナバウアー、当時から美しかったスパイラル、個性的だったスピンなど見どころ満載で、精一杯イキイキと力いっぱいな煌めき演技でした。

今シーズンの世界選手権は東京です。また素敵な煌めきデビュー演技コレクションが増えることになるでしょうかね。…パトリック・チャンがナショナルで3位に入れれば…いや、まだまだ先は長いから…多くを望んではいけない…。

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余談になるけども、オマー・シャリフは大好きです、アラビアのロレンスのときの「アリ」には心鷲掴みされましたが、しかし、このジバゴにはあまり合ってなかったかなぁ。私の中で「アリ」の印象が強すぎたからそう思うのかな。

あと、私、映画のジェルソミーナの心は幸せに死んで行ったと思っています。ザンパノは不幸だと思うけども…。これについてはまたいつか…。

*1:もちろん、重いものを色々と背負っているのだけども、特に織田君は出場枠という重荷が

*2:不倫の壮大な大河モノでもあるのですが

*3:実は、偶然読んだこの記事がきっかけで、U嬢の日記をしかりとチェックするようになり、コメントを付けるようになり、揚げ句に一緒にガタガタと震えながら観戦する仲までになってしまったのです

*4:この作品、初めて見たのは中学生の時だったのですが、もうトラウマになりそうな程…やりきれない…と思った作品でした・笑、大人になった今はまた違う感想をもってます…大好きな映画なので、また別に機会に、純粋に映画についてのみでイロイロ書くかも…

*5:今のこの時代、またもっと昔ならば私はそんなことは思わないと思う、ただ、あの当時は、何よりも私自身が4回転至上主義に染まっていたので。…以前のエントリー参照http://d.hatena.ne.jp/kasumi151/20060215/p3