行ってきましたNHK杯(1)まずは世間とは違って…しめっぽい私

現地でお会いした皆さん、楽しいひとときをありがとうございました。
色々な思いがありすぎて何から書いていいやら…とくにパトリック君についてはもう大興奮に目がハート状態で語りたいところなのだけども、まずは今の私の正直な思いを吐露します。
今日は素晴らしい日でした。大ちゃんのあれほどの演技をこの目で生で見られたこと、もう、何をどう言いあらわしていいか…上手く言葉にまとめられない。まさに『蝶の変体というか、さなぎが美しい蝶になった瞬間」に立ち会ったような思いです。ほんとうに素晴らしい日だった。そして日本男子が全員すばらしい演技で表彰台を独占、夢のような光景でした。
しかし、しかし、しかし、その感動ゆえに感受性が強くなりすぎてしまったのか、私の心のウェットさが増幅してしまった日でもありました。
織田君の滑走の際にフェンスのところに立つバーケル氏の姿を見ると、彼の長い間の教え子の姿を思い浮かべてしまう、その教え子の現状に思いをはせてしまう。…どうしようもない寂しさがこみあげてきて、涙がとまらなくなってしまった。
フェンスをはさんで向かい合うバーケル氏とジェフの姿を今まで何度も当たり前のように見てきた。キスクラでしょんぼりしているジェフと反省会をしている姿を何度も当たり前のように見てきたから…。
実は私は、トリノ五輪後はジェフは引退する可能性もおおいにあったので、今季のGPにジェフが不在であることの覚悟はかなり出来ていた。でも、そういった形による不在と疲労骨折による不在ではその意味が違う。どうしようもなく胸が苦しくなって涙がこみ上げてきてしまった。
ジェフは今怪我と闘っている。アスリートなら多くの人が通る道。そして、後輩がどんどん育ちいずれ抜かされていくこともアスリートであればまた誰でもが通る道。そうしてスケートの魂のようなものが後輩達に脈々と引き継がれていくものだと思うから。今までにもそういう世代交代をたくさん見てきた。

以前にも書いたことがあるが*1バーケル氏のコーチとしてのキャリアは今年で17年を迎える。17年目といえばバーケルコーチとジェフのつきあってきた年数そのもの。ジェフなくしてバーケルコーチの現在はありえない*2。…これくらいの格というか、忙しいコーチになってしまったら、おそらくこれから先において、海のものとも山のものともわからぬ7才の子供を育てるようなことはもうないのだろうな…。
ジェフとの16〜17年間におよぶ師弟関係で培った指導力は今の織田君への指導*3に多いにいかされているのでしょう。また他の選手を育てる際にも同様に。選手を育てるということはそういうことなのでしょう。このように全ての教え子に全力を尽くすコーチだからこそジェフから絶大な信頼を受けているのでしょう。とても素晴らしく素敵なことだと思う。…ただ、一方の今日のその華々しさを目のあたりにし、対してジェフが今、疲労骨折という怪我と闘いリンクへの復帰をめざして必死で闘っていることを思うと、なんとも言いあらわしようのない思いにとらわれ涙がとまらなかった私なのです。
大ちゃんの4回転入りパーフェクト演技を生で見た素晴らしい日、日本男子が素晴らしい演技で表彰台独占した素晴らしい日、そして、その華々しさに、ジェフのいないシーズンが私にとってこれほどまで寂しいものだったのかと、なぜだかあらためて思い知らされてしまった日にもなった。

今回の開催地は長野。02年世界選手権の時とは違うリンクだが、あの時と同じ長野。ジェフの演技に凄まじい数の花束がふりそそぎ、フェンスのところにいたバーケル氏はとてもとても嬉しそうにしていた。キスクラではダグ・リーも一緒に座っていて、やはりダグ・リーの方は有名大物コーチでとても貫禄があって、当時のバーケル氏はダグと比べてしまうと無名な存在で、なんとなく頼りなさげ見えたものです(笑)あれはもう4年以上前のこと。
あの時と同じ長野、フェンスの側に立つバーケル氏の姿、あの時のことがありありと思いだされ、あの時まだ19才だったジェフのキラメキ演技*4が私の心の中にあざやかによみがえってくる。

ジェフ、あなたがリンクに帰ってくる日を待っているからね。


と、しめっぽいことはここまで。
次は目がハートでNHK杯雑感を。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kasumi151/20061102/p1http://d.hatena.ne.jp/kasumi151/20060816/p3

*2:もちろん、他にも教え子達の存在も大きいでしょう。たしかペアの方ではそれなりにかなり良いところまで育った教え子もいたと記憶しております。ただ、一番長い付き合いであり、彼の指導の下で五輪メダリストになったジェフの存在は大きい

*3:たとえば…織田君のプログラムはジェフと同じくデビッド・ウィルソンの振り付けだが、バーケル氏はこのウィルソンの振り付けを実によく理解しているのでしょう、新採点になってからは点数の取りこぼしの無いように、なおかつ振り付けの世界感を壊さぬようにできるかがいっそう大事になってきた。そういった点において、コーチがその振り付けをどれくらい理解しているかが重要になってくる。ここがしっかりできているからこそ、織田君がしっかりと点数をとれるように指導できる。この部分もジェフとウィルソンとバーケルコーチが長年かけてつくり上げたラインがいかされている。…もちろんそれは織田君がそれにこたえる努力をしているからこそのことです。

*4:http://d.hatena.ne.jp/kasumi151/20060828/p1http://d.hatena.ne.jp/kasumi151/20060215/p3