教授の自伝「音楽は自由にする」

2007年から雑誌『エンジン』に連載され今年の冬に出版された坂本龍一の人生初の自伝「音楽は自由にする」をようやく読み終えた。
単純に……淡々と時系列順に語られており、その時代の空気を思い出しながら……とても深い、すごい人だと。しかし当の教授は自分の成したことに対して実に謙虚というか……客観的。
以下少し引用させていただきます。



ーーーーーーそんなぼくが「音楽家でござい」と大きな顔していられるのはひとえにぼくが与えられた環境のおかげだ。
ーーーーー略ーーーーーーーーそれらの人々がぼくに与えてくれたエネルギーの総量は、ぼくの想像力をはるかに越えている。なぜこんなにも大変なことなのかと、光さえ届かない漆黒の宇宙の広大さを覗き見ているような、不思議な気持ちにとらえられる。ーーーーーーーーー



素敵な言葉だ。


音楽は自由にする

音楽は自由にする






そうそう、あまりになんでもかんでもを自分の好きなスケーターとかに結びつけて思いをはせるようなことはあまりしたくないなぁとは思っているのだけど……教授といえばジェフのラストエンペラーということで、はい、ラストエンペラーのくだりのエピソードは特に興味深いですよ。
沢山の制約の中で生み出された曲。試写会で見たときには、ご本人の意図とはまるでかけはなれた物になっていて、失望と怒りと驚きで心臓が止まるんじゃないかと思ったという。その作品がアカデミー賞を獲得し、世界のサカモトとなるわけですからね、面白いものです。
後のページで「制約とか他社の存在というのはとても重要だと思う」と語っておられますが、ほんと、何もかも自分の思うがままに自分の満足出来る物=名作になるわけではないという。



ジェフ本人がこのラストエンペラーの曲に何を感じどう解釈して滑ったのかについては知らないけど。競技会では緊張のあまり楽しんで滑ることができなかったジュニア時代から一転、競技会のストレスの下であっても、観客の前で滑る喜びを知ったかのようなシニアデビューの年のプログラム。カナダのジェフが広い世界に飛び出す切符を掴んだ年のプログラム。ジェフのラストエンペラーに教授のこの当時の話しを重ねて見てみるとまた一つ感慨深いものがある。


ジェフがきっかけで教授に興味をもたれた方がいらっしゃいましたら、是非、読んでみてくださいまし!